はじめに: このブログについて

1.

萌えとは物語である。原始の愛である。歴史に練磨された型であり、物の理である。複雑化の末にシンプルであり、単純化の末に極大の情報量を持つ。製品(プロダクト)かつ芸術(フルオーダー)であり、それは時として無から創造される。萌えの形は語られることで決定する。雨の種類や虹の構成色数が言語によって異なるように。可能な思考が萌えを作り、可能な言葉が萌えを作る。宇宙は無限に分解される。我々が語り続ける限りにおいて。彼女たちは無限に解釈される。我々が観測を続ける限りにおいて。萌えとは語り得ぬ神秘の境界に到達する無限の試みであり、それは我々の内部に存在する。

2.

「世界の認識は言語の影響を受ける」というサピア・ウォーフの仮説は現代では否定の向きにあるが、言葉と思考が互いに基盤を生成し合う相生の関係にあることは文学の存在にも肯定される事実だ。「萌え」が死語になりつつある今、かつて人が萌えと表現した感情は誰にも気づかれぬままひっそりと死んでいくかもしれない。もはや我々は「黒猫、いい…」「わかる」だけで議論を完結させてはならない。萌えを解剖し、手に取り眺め、数多くの言葉を以て体系化する必要がある(その一部が神秘の彼岸にあることは先に述べた通りだ)。

安心してほしい。我々にはヒロインという、先人たちの磨き上げた美しいレンズがあるのだから。

3.

俺の妹がこんなに可愛いわけがない』に登場するヒロイン、黒猫のファンブログだ。それ以上でも、それ以下でもない。